院長コラム

メタボリックドミノ

口腔内ケアで重大疾患へのドミノ倒しをくい止める

歯周医学の分野において、歯周病と全身疾患との関連について研究で明らかになりました。
それぞれの危険因子の経時的な連鎖をドミノ倒しに見立てた「メタボリックドミノ」。歯学は医学の上流に位置しており、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病の発生をさかのぼると、栄養摂取に関わる咀嚼や咬合機能、そして重要な口腔内細菌の影響へとたどり着きます。

まさにお口は健康の入り口、メタボリックドミノ倒しをできるだけ上流で止めるために、当院では口腔内ケアをしっかりと行う予防歯科に力を入れています。

歯周病は重大疾患の増悪因子

歯周病は、口腔内における細菌感染症であり、歯の喪失の主な原因です。
生活習慣(口腔清掃,喫煙,アルコール摂取)やストレスなどが歯周病の発生・進行に関連していることから、メタボリックシンドローム(Metabolic Syndrome: 以下,MS)や糖尿病などと同じように、歯周病は生活習慣病に分類されています。

例えば、歯周病と糖尿病は、相互の状態に影響を与えるリスクファクターであり、糖尿病が歯周病の症状を悪化させることが知られています。
歯周病関連細菌から産出される内毒素(リポ多糖:Lipopolysaccharide, LPS)が、歯肉から血管内に入り込み、マクロファージからの腫瘍壊死因子α(tumor necrosis factor-α, TNF-α)の産生を促進するのです。

この歯周病由来の毒素は、インスリン抵抗性を示し、糖尿病を悪化させるだけでなく、体内でコレステロールや中性脂肪の分解・合成に関与する酵素の量に影響を与え、脂質異常を起こすこともあります。
このため、歯周病は肥満・糖尿病・高脂血症のリスクファクターかつ増悪因子であると考えられています。

特に、肥満の中でも内臓脂肪型肥満に高血糖・脂質異常症・高血圧症のうち2つ以上を合併した状態であるMSと歯周病との関連性に関する研究が行われるようになってきました。

そして、たとえ軽症な生活習慣病でも、複数合併すると致命的な疾患の発症リスクが高くなり、その予防が非常に重要であることから、平成20年4月からMSの予防に重点をおいた「特定健診・特定保健指導」の実施が義務付けられています。

現在、歯科項目は健診項目に含まれておらず、このような情報を患者さまが知りうる機会があまりに少ないのです。
当院では積極的に患者さんに情報提供を行うこと・予防歯科に力を入れ、お口から患者さまの全身全体の健康に貢献すべく取り組んでいます。


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